民法が改正され、令和2年(2020年)4月1日から施行されました。
改正に関する所感
- 判例・実務が明文化された
- 現実にそぐわない点が解消。利率・保障等。
- わかりやすい文言に変更。
改正内容
抜粋
法務省:民法の一部を改正する法律(債権法改正)について より抜粋
- 消滅時効 5年。
- 法定利率 年3%。3年ごとに法定利率の見直し。
- 保障
極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効
保証人の意思確認として、公正証書が必要
債務者から保証人へ情報提供義務(債務額・履行状況等) - 債権譲渡
債権譲渡は可能。
将来債権の譲渡。 - 約款(定型約款)
約款の定義
「定型取引」
① ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引
② 内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの
定型取引において、
③ 契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体
契約内容
次の場合は、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても 合意したものとみなし、契約内容となる
① 定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合
② 定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた場合
信義則に反して顧客の利益を一方的に害する不当な条項は、合意したとはみなされない
改正
次の場合は、事業者が一方的に改正可能
①変更が顧客の一般の利益に適合する場合
②変更が契約の目的に反せず,かつ,変更に係る諸事情に照らして合理的な場合に限る。
上記以外は事前にインターネットなどで周知をすることが必要。 - 意思能力制度 意思能力を有しない者がした法律行為は無効
- 錯誤
錯誤の効果を「無効」から「取消し」に変更。
上記錯誤の明確化
① 意思表示が錯誤に基づくものであること
② 錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること
③ 動機の錯誤については、動機である事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていること - 代理人の行為能力 弁護士 雨のち晴れブログ : 民法102条(代理人の行為能力)
- 債務不履行による損害賠償
債務不履行による損害賠償請求および解除権に関する民法改正の内容と取引基本契約書の見直し
契約解除
債務者の責めに帰することができない事由によるものであっても解除を可能
不履行が債権者の責めに帰すべき事由による場合には、解除はできない
催告解除が制限される要件
不履行が軽微であるときは解除をすることができない等
無催告解除の要件
履行拒絶の意思の明示、(一部の履行はできる場合でも)契約をした目的を 達するのに足りる履行の見込みがないこと等の事情があれば解除可能 - 瑕疵担保責任
買主の権利の明文化
①修補や代替物引渡しなどの履行の追完の請求、②損害賠償請求、③契約の解除、④代金減額請求
「隠れた瑕疵」を「契約の内容に適合しない」に変更
原始的不能の場合であっても、債務不履行に基づく損害賠償を請求が可能 - 債権者代位の内容 民法改正によって明文化された債権者代位権
- 詐害行為取消権
債権者は、債務者がした行為の取消しとともに逸出財産の返還(返還が困難であるときは価額の償還)を請求することができる。
詐害行為取消しの訴えにおいては、受益者を被告とし、債務者には訴訟告知をすることを要する。 - 連帯債務 【連載】債権法改正と金融実務~連帯債務に関する見直し
連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。
連帯債務者の一人についての免除、消滅時効の完成も、他の連帯債務者にも効力が生じない。 - 免責的債務引受 【連載】債権法改正と金融実務~債務引受に関する規定の新設
債権者・引受人間の契約によってすることができる。
引受人は債務者に対して求償権を取得しない。 - 併存的債務引受 【民法改正】併存的債務引受の要件・効果の規律の新設~民法が変わる(191)
債権者・引受人間の契約によってすることができる。 - 相殺禁止の緩和 120年ぶりの民法改正!おさえておきたい5つのポイントをわかりやすく解説
相殺禁止の対象となる不法行為債権を次の①②に限定し、それ以外は相殺可能
① 加害者の悪意による不法行為に基づく損害賠償
② 生命・身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償 - 第三者弁済
「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」の弁済が債務者の意思に反する場合であっても、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときには、その弁済は有効。
「弁済をするについて正当な利益を有する者以外の第三者」は、債権者の意思に反して、弁済をすることができない。 - 契約の自由に関する基本原則 契約を決定する自由。契約内容の自由
- 対話者に対する契約の申込みの効力等
対話が継続中:いつでも申込みの撤回が可能。承諾なし。申込みは効力を失う - 隔地者間の契約の成立時期 発信主義から到達主義に変更
- 危険負担
特定物に関する物権の設定又は移転を目的とする双務契約等について債 務者の責めに帰すべき事由によらないで目的物が滅失又は損傷した場合 について、債務者主義に変更。 - 消費貸借 民法改正で金銭消費貸借契約はどう変わるのか?
「書面」でする、受取りまでは借主は解除可能 - 賃貸借
賃貸借終了時のルール 民法改正で「敷金」の扱いはどう変わる? | オーナーズ倶楽部
敷金の返還時期:賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき
敷金の返還時期:賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき
返還の範囲:賃料等の未払債務を控除した残額
通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)や経年変化についてはその義務を負わない
・通常損耗・経年変化
家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
地震で破損したガラス
鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
・通常損耗・経年変化に該当しない
引っ越し作業で生じたひっかきキズ
タバコのヤニ・臭い
飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備等の毀損
賃貸不動産が譲渡された場合
・賃貸人の地位の移転
・賃料請求等をするには、所有権移転登記が必要
賃貸借の存続期間 50年
-
請負 請負契約の民法(債権法)改正対応
報酬の請求が可能(注文者の利益の割合に応じて請求)
①仕事を完成することができなくなった場合
②請負が仕事の完成前に解除された場合
原因が、注文者の場合、全額請求可能
担保責任
目的物が契約の内容に適合しない場合
注文者は、①修補等の履行の追完 ②損害賠償請求 ③契約の解除 ④代金減額請求 が可能
建物等の建築請負
深刻な瑕疵があった場合、契約解除することができる。
注文者の権利の期間
契約に適合しないことを知ってから1年以内 - 寄託 【民法改正】寄託|スター綜合法律事務所
当事者間の合意があれば契約が成立
契約の解除について、
① 寄託者:物の交付をする前は、いつでも契約を解除できる。
② 書面による寄託の場合を除き、無報酬の受寄者は、物の交付を受ける前は、いつでも契約を解除できる。
③ 報酬を得る受寄者と書面による寄託の無報酬の受寄者は、寄託者が物の引渡しの催告を受けても物の引渡しをしないときは、 契約を解除できる。
当事者の権利・義務
寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対する訴えの提起等をした場合
受寄者は、原則として寄託者に対して寄託物を返還しなければならない
混合寄託 明文化
混合寄託の要件について、各寄託者の承諾が必要
寄託物の一部が滅失したとき 各寄託者は、受寄者に対し、自己の寄託した物の割合に応じた数量の寄託物の返還を請求できる
寄託の規定を適用
寄託物の担保責任については消費貸借の規定を準用。